おなかの学校

おなかから整える心、身体、そして生き方。

古傷の痛み

寒い季節になると古傷が痛むことがある。

過去に骨折して完治したはずの患部、過去に手術して癒着が残った患部、過去に事故をして後遺症が残った患部、それらの患部は梅雨時や冷え込む時期に思い出したように痛むことがある。

古傷の痛みは多くの場合深刻ではないが、その分しつこい。20年、30年と尾を引くようなことが多く、いつになったらなくなるんだろうと半分諦めながら恨めしく思ったりするが、ほとんどの場合火葬場までついてくる。つまり古傷はすでに自分の肉体の一部になりきってしまっているのである。だから肉体を切り離さない限り、古傷は基本的に消えない。

今私が相手にしているのは、30年前の交通事故での足首骨折に由来する古傷である。聞けば当時の事情により、術後のリハビリを受けなかったそうだ。今は時すでに遅く、関節の可動域はかなり制限されているだけでなく、その余波が足全体の筋肉の硬さという副作用を引き起こし、さらに反対足の膝の痛みというところまでやってきて、私が施術を行うことになった。

100%戻ることはないということは本人には伝えている。本人も了解している。既に30年ほどもずっと付き合ってきたのだから。しかし私の技術ではなんとか70%ほどまでは機能回復を図れると思う。足首が70%ほど動くようになれば日常生活にはほぼ支障はないだろうし、アマチュアレベルのスポーツならできるだろうし、何より足全体の硬さも反対足の膝痛も解決することができるだろう。つまり今とは全く違う足になることができる、

とはいえ30年間動かなかった関節を動くようにするのは容易ではない。古い患部に巻き付いて癒着した筋組織をできる限り剝がしていかなくてはならない。その上で関節を動かし可動域を付けていかなくてはならない。軟骨も減少しているだろうから、徐々に負荷をかけて靱帯を強化する指導もしていかなくてはならない。難易度はとても高い施術になる。それでも技術さえあればある程度までは何とかなるのも事実だ。

今見ている別のお客さんは、肩関節を骨折したが、手術1か月後から私のもとでリハビリ施術を行ってきた。病院の理学療法も受けてはいるがそれでは足りない。もっとより深く、しかし完全に安全なギリギリのところまで踏み込まなくては後遺症が大きくなる。このケースでは施術するタイミングも様子を見ながらできるだけ早い段階で施術を行ったので、将来古傷になるような後遺症は恐らく残らないだろうというところまで回復してきた。

誰でも長く生きていると身体のどこかに一つや二つの古傷はあるものである。ぶり返す古傷に過去の辛さを思い返し、より慎重に生きていこうとするならば古傷は悪いばかりではないだろうと思う。しかしそれでも事故や怪我の回復処置はできるだけ速やかに行うことが望ましいし、そのタイミングですぐに頼ることができる技術の確かな先生を持っておくこともまた大事だろうと思う。怪我の後の回復期に施術を合わせるのが一番効果的なのだから。

とにかく疲れた。30年間放置された古傷は伊達ではなかった。

 

三宅弘晃